213: 宏智語録
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九巻

宋朝曹洞宗の代表的禅僧、天童宏智正覚(一〇九一-一一五七)の語録。道元将来と伝える宋版六巻が大分県泉福寺に蔵せられ、これを改編して九巻としたのが宝永五年版であり、泉福寺本巻首の欠文と改編本の不備を改め、原型に復元せんとしたのが寛政版である。それらの事情については、『洞水和尚語録』十五の「重校宏智録序」(「曹洞宗全書」語録五)に詳しい。泉福寺所蔵の宋版は天下の孤本である。『続開古尊宿語要』の本は抄録であり、また続蔵の本はその伝来を明らかにしない。別に『石井積翠軒文庫善本書目』によ って、元版の『天童覚和尚語録』四巻の存在が知られ、『積翠文庫所蔵禅籍目録』には永享十年(一四三八)の写本十冊を著録するが、いずれも宋版六巻との関係は不明である。特に、欠丈と改編の記すら掲げぬ正蔵のテキストは、研究者を誤らせる危険性がある。「禅学大系」祖録部二に収める抄録二巻もまた同様である。『宏智語録』は今日なお定本を得ていないといってよい。石井修道の「宏智広録考」(「駒沢大学仏教学部研究紀要」三十)は、本録の本格的研究のはじめとなるであろう。